ClubA&Cより引用よっつめ。
ジャンル:現代FT 作者:Sasayan様 サイト:天界の門 天使や悪魔について詳細に調べられたようで、物語全体にしっかりとした基盤がありますね。読者として安心して読み進めていけました。登場人物や魔獣の名前から神話的な雰囲気がひしひしと伝わってきて、神話好きな私としてはそれだけでも楽しめました。 そんな下調べに裏打ちされた描写も秀逸で、特に魔獣の描写は圧倒的ですね。細部に渡ってきちんと描写されていて、醜悪で恐ろしい姿が目に浮かぶようでした。突然そんなのと戦わなければならなくなった巧の恐怖も十分理解できます。 Sasayan様の「魅せよう!」という気迫が感じられました。 しかし戦闘以外、日常や心理描写となるとキャラクターの魅力が少し減ってしまっています。なんとなく、五感を刺激するような描写が少ないのです。 表情や仕草、台詞ならどのような声音だったのか、などを入れると随分と変わると思います。前半は描写の不足が顕著で、特にリリィとアポロの会話は流れ作業のような事務的な印象があります。二人の立場を考えれば当然のことかもしれませんが、会話の合間からアポロがリリィを大切に思っているように感じられました。その辺りをもう少し描写すれば生きた場面になると思います。 流れ作業に感じる理由のもう一つは、頻繁に文語らしきものが混じっていることでしょうか。これはアポロ達に限らず、人間界でもそうです。それに作者の都合で言わせているような台詞も多々ありました。もう少しくだけた表現でも良いんじゃないでしょうか。 説明的な展開が目立った前半ですが、後半、特に第三章で恋愛が絡んできたあたりからぐぐっと引き込むような描写が増えてきました。恋愛という身近な事象を取り入れることで「天使と悪魔の戦いの物語」に一種のリアリティが生まれています。 それに一気にキャラに親近感が湧くんですね。そして主人公の現状。二股をかける気はないのに、自分では気持ちに整理がつけられない、どうしようもない……そういうことってきっと現実にもありますよね。その葛藤を描くことでキャラに深みが出て、読者も感情移入がしやすいと思います。 ここで惜しむらくは展開が急なこと。第一部は恋愛よりも「覚醒」に重点が置かれているように感じます。そのせいで恋愛関係のエピソードがなおざりになってしまっています。沙耶とくっつくシーンはちょっと早すぎですよね。それとも現実はあんな感じなのでしょうか(ごめんなさい、ちょっと恋愛したことなくて…) 急ぎたい気持ちも分かりますが、そこはぐっと堪えてもう少し具体的なエピソードを入れてみて下さい。心理描写ももっと掘り下げればよりキャラクターに深みが増して魅力的になりますよ。 第二部以降に期待ですね。 □□□□□□ 描写といえば、もうひとつ。 Sasayan様は格闘技がお好きなのでしょうか。戦闘シーンで格闘技を彷彿とさせるような描写が目立ちました。天使と悪魔の戦いに格闘技という組み合わせは新鮮な響きですね。 しかし私はそっちの方面はあまり精通していないので、ちょっと理解できない場面もありました。 頻繁に出てきた「トンボを切る」とはどういった感じなのでしょうか。あと「ジークンドー」でしたっけ。あれもちょっと想像できませんでした。 格闘技以前の問題だったらすいませんorz ですが第一部のラストはスポ根(この字でしたっけ…)のような印象を受けたので、これはこれで物語と合ってるのかなあと思いました。
by ixchel
| 2006-03-14 23:26
| 長編以上
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